米国 Adobe Systems はソフトウェアのみを開発する企業として世界最大の企業ですが、動画やゲームを作成するための同社の製品『Flash Professional CC』の名称を、2016年に『Animate CC』に変更することを発表しました。HTML5 コンテンツのうち、三分の一以上がこのソフトによって作られている現状を正確に反映させるため、としています。
Adobe isn’t killing Flash, just changing the name of the tool that makes it
Adobe も認める「全デバイスにおける未来のプラットフォーム」 HTML5
この変更を告知した投稿の中で、同社は Flash に「ウェブを『進歩』させる」とクレジットを入れています。その一方で、HTML5はノート PC のバッテリーにも扱いやすく、かつて Flash が持っていたような脆弱性も持たず、「全デバイスにおける未来のプラットフォーム」として十分に成熟したと認めています。
デスクトップブラウザ用 HTML5 ビデオプレイヤーのリリースに合わせ、新機能を搭載したAnimate CC は2016年1月にアップデートの予定です。ただ、このアップデートで Flash が削除されてしまうわけではありません。Animate CC がサポートするのは HTML5 だけでなく Flash、WebGL、4K ビデオ、SVG も含みますので、たとえば Facebookゲームのような Flash Player が必要なコンテンツも見る事が出来ます。Adobe によると、Microsoft や Google とは既存の Flash コンテンツの互換性やセキュリティ確保のために協力してきており、Facebook ともセキュリティに関する情報をやり取りする予定であるとしています。
業界の話
さて、Adobe のビジネスパートナーのリストの中に、ある巨大企業の名前がありません。その名は Apple。5年前にMacにFlashを入れるのを止めた会社です。Apple が Flash ではなく、オープンスタンダードである HTML5 や CSS、JavaScript といったものを iPhone や iPad に対応させたときから、Apple と Flash の犬猿の仲は始まりました。
スティーブ・ジョブスは2010年、『Thoughts on Flash(Flash についての考え)』と呼ばれる声明を発表しました。
「モバイルデバイス(PC でも)で支持を得るのは、モバイル時代に作り出された HTML5 などの新しいオープンスタンダードでしょう。そして恐らく Adobe がすべきは、Apple が過去と手を切ったことを非難するのではなく、将来に向けて優れた HTML5 ツールを作ることに注力することでしょう」
これを受けて Adobe は、Apple がこのウェブの未来を間接的に台無しにしているとして非難しました。それが今や Adobe も「新しいウェブ・スタンダード」というフレーズを使って HTML5 を掲げています。まさにこのとき Apple が声明を出した通り。Adobe が Flash 以外を、それも Apple の勧めている HTML5 を使うとは、何たる皮肉でしょうか。