遺伝子組み換え技術CRISPR CAS9でマラリア感染を駆逐する

マラリアは現在でも年間約2億人が感染し、そのうち約60万人が死亡している恐ろしい感染症です。日本国内では既に撲滅されていますが、戦後すぐには年間一万人単位で発症していた病気です。

‘Gene drive’ mosquitoes could end malaria once and for all

http://www.engadget.com/2015/11/23/gene-drive-mosquitoes-could-end-malaria-once-and-for-all/

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マラリアは過去の病気ではなく、ノーベル賞受賞の理由にもなっている。

マラリアは現在でも東南アジア、アフリカ、中南米などの熱帯~亜熱帯地域で猛威を振るっています。2015年のノーベル生理学・医学賞を受賞された屠呦呦(と・ようよう。文字化けしている方へ、「よう」は「口偏」に「幼」)博士の受賞理由も「マラリアに対する新たな治療法に関する発見」です。

このマラリアの脅威が、カリフォルニア大学アーバイン校とサンディエゴ校の研究者の発見により解消されるかもしれません。学術雑誌『PNAS』にて発表された研究によると、マラリア原虫に耐性を示す遺伝子を効率よく次世代に伝える方法が開発されました。論文は誰でも閲覧できます。

世界最新の遺伝子組み換え技術「クリスパー」とは

マラリアは、マラリア原虫に寄生されたハマダラカという蚊によって拡がります。すでに原虫に耐性を持つ蚊遺伝子操作で作り出すことには成功しているのですが、これにも問題があります。この遺伝子をどうやって自然界の蚊全体に行き渡らせるのか、という問題です。この遺伝子が子に伝わる確率は50%。全体に行き渡るには何世代必要になる事やら。しかし、これを解決したのがアーバイン校の研究です。

研究者らは、原虫耐性遺伝子が子に伝わる確率を、ほぼ100%(!)にまで高めることに成功しました。彼らがこのときに使った技術は「CRISPR CAS 9(クリスパー・キャス・ナイン、通称『クリスパー』)」と呼ばれる遺伝子組み換え技術で、遺伝子を自由に切り貼りするための技術として2013年に開発されました。アーバイン校のグループは CRISPR を用いて、原虫に耐性を示す遺伝子を2つ、蚊の遺伝子に追加しました。そしてこの蚊を交配させたところ、99%以上の割合で耐性遺伝子が受け継がれ、十分に耐性を獲得したのです。この蚊を自然界に放てば、効率よく耐性遺伝子をばらまけることでしょう。

使うべきか使わざるべきか、それが問題だ

とは言え、倫理的、技術的なハードルはまだ残っています。ある種に遺伝子を人工的に加えて、それを自然界に放つ。その結果生態系のバランスが崩れ、マラリアで失われる以上の命が失われる可能性もありますし、そうなった場合には人間以外の種にも深刻なダメージがもたらされる可能性だって考えられます。

「倫理的に許されることなのか。これを扱うのは社会科学の領分になりますが、社会科学は、今はまだこの問題を扱える段階に至っていません」研究チームのあるメンバーはそう語ります。確かに良い影響だけが実現すればこれ以上ない話でしょう。ですが強力な薬には副作用が付き物。慎重に見極めなければいけません。

最後に、クリスパーについての解説動画を載せておきます。英語ですので大変ですが、ご了承ください。

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